お知らせ

登下校防犯プランに基づく取組


登下校防犯プラン

平成30年6月22日
登下校時の子供の安全確保に関する関係閣僚会議

 子供の安全確保は、安全安心な社会の要である。
 しかしながら、平成30年5月、新潟市において、下校途中の7歳の児童が殺害され、未来ある尊い命が奪われるという、痛ましく許しがたい事件が発生した。
 また、犯罪情勢をみると、道路上における身体犯の被害件数全体は、過去5年で減少しているにもかかわらず、このうち被害者が13歳未満の子供である事犯に限定すると、ほぼ横ばいで推移している。そして、こうした子供の被害は、登下校時、特に15時から18時の下校時間帯に集中している傾向にある。

 従来、登下校時における子供の安全を確保するための対策については、地域の子供は地域で守るという観点から、地域の現場において多岐にわたる努力がなされてきたが、地域の安全に大きく貢献してきた既存の防犯ボランティアが高齢化し、担い手が不足しているという課題がある。
 加えて、共働き家庭の増加に伴い、保護者による見守りが困難となっている上、放課後児童クラブ・放課後子供教室等において放課後の時間を過ごす子供が増加し、下校・帰宅の在り方が多様化していると考えられる。

 したがって、従来の見守り活動に限界が生じ、「地域の目」が減少した結果、学校から距離のある自宅周辺で子供が1人で歩く「1人区間」等において、「見守りの空白地帯」が生じている。
 この「見守りの空白地帯」における子供の危険を取り除くため、登下校時における総合的な防犯対策を強化することが急務であると言える。

 政府においては、今回のような事件が二度と発生しないよう対策を強化することは、関係省庁が横断的に取り組むべき課題であるという認識の下、5月18日、「登下校時の子供の安全確保に関する関係閣僚会議」を開催した。
以降、従来の取組を検証した上で、今般、「登下校防犯プラン」として、以下のとおり対策を取りまとめた。
 社会全体で子供の安全を守るため、この対策に迅速に取り組むこととする。

1. 地域における連携の強化

 登下校時における防犯対策の推進に当たっては、警察、教育委員会・学校、自治体の3者に加え、放課後児童クラブ・放課後子供教室、地域住民、保護者等の関係者が連携することが不可欠である。
 このため、以下の対策に取り組む。

(1) 登下校時における防犯対策に関する「地域の連携の場」の構築

 警察、教育委員会・学校、放課後児童クラブ・放課後子供教室、自治体、保護者、PTA、地域のボランティア、自治会等の関係者が集まり、登下校時における防犯対策について意見交換・調整を行う「地域の連携の場」を各地域に構築する。
 この「地域の連携の場」として、地域の実情に応じて、通学路の安全確保連絡協議会、学校警察連絡協議会、地域学校安全委員会等、既存の協議の場を活用することは効率的である。ただし、既存の協議の場を活用する場合であっても、確実に登下校時における防犯対策を協議の対象とし、そのために必要な関係者について確実に参画を得ることにより、その成果を実効的な対策に結び付けるよう留意する。

(2) 政府の「登下校防犯ポータルサイト」による取組の支援

① 内閣府のホームページに「登下校防犯ポータルサイト」を新設し、登下校時における防犯対策に関し、関係省庁の施策、各地域の取組等の情 報を集約・発信することにより、地域の取組を支援する。

② 文部科学省のホームページ内にある「文部科学省×学校安全」サイト、警察庁のホームページ内にある「自主防犯ボランティア活動支援サイト」 等、関係省庁のホームページにおける情報発信についても、登下校時における防犯対策に取り組む関係者の参考となるよう、引き続き充実させる。

2. 通学路の合同点検の徹底及び環境の整備・改善

 登下校時における子供の安全確保のためには、関係者が連携して通学路の安全点検を緊急かつ確実に行い、「1人区間」等の「見守りの空白地帯」等の危険箇所を把握・共有した上で、下記(2)のソフト面と下記(3)のハード面の両面から、環境の整備・改善を行う必要がある。
 このため、以下の対策に取り組む。

(1) 通学路の防犯の観点による緊急合同点検の実施、危険箇所に関する情報 共有

① 教育委員会・学校、子供・保護者、見守りに関わる地域住民、警察、自治体、地方整備局、道路管理者、放課後児童クラブ関係者等は連携して、政府が示す要領を踏まえ、平成30年9月末までに、通学路の防犯の観点から緊急合同点検を実施する。

② 関係者が連携して合同点検を実施する際には、例えば地域安全マップの作成等を通じ、危険箇所を「見える化」して情報共有し、環境の整備・改善につなげやすくするとともに、こうした作業過程を通じ、関係者の連携を実質的に深める。。

(2) 危険箇所の重点的な警戒・見守り

① 緊急合同点検により把握された危険箇所について、警察官による警戒・パトロールを重点的に実施する。

② 防犯ボランティア団体等、地域住民による見守りについても、危険箇所への重点的な配置にシフトすることにより、その効率的・効果的な実 施を図る。

(3) 防犯カメラの設置に関する支援、防犯まちづくりの推進

① 緊急合同点検により把握された危険箇所に関し、上記(2)のソフト面での対策を補完するハード面での環境整備・改善策として、現場のニーズを踏まえ、通学路における防犯カメラを緊急的に整備するため、政府において必要な支援を講じる。

② 地下通路、駐車場、公園等の公共施設の整備に併せ、安全性の確保等の施設管理上の観点から防犯カメラ、防犯灯、見通しの良い植栽・柵等を設置する場合、市街地整備の一環として、政府において、社会資本整備総合交付金等による支援を実施する。

③ 国土交通省等の小冊子「安全で安心なまちづくり~防犯まちづくりの推進~」を改訂するとともに、各地方整備局等に、防犯まちづくりに関する相談窓口を設置し、自治体における防犯まちづくりの取組を促進する。

④ 適切に管理されていない空き家の存在は防犯の観点から望ましくないため、政府において、空家等対策の推進に関する特別措置法に基づく取組、立地誘導促進施設協定制度の活用等を推進する。

⑤ 政府において、子供等を対象とした犯罪・前兆事案の発生状況を踏まえた地理的特性の分析などの調査研究を実施し、防犯環境整備の充実等に向けた取組を推進する。

3. 不審者情報等の共有及び迅速な対応

 警察や自治体においては、あらかじめ登録している者に対し、子供の犯罪被害や不審者に関する情報(以下「不審者情報等」という。)を送信する防犯メールのサービスを実施しており、こうした取組が全国に広がっている。
 警察が把握した不審者情報等は、教育委員会を通じて学校や保護者に提供されたり、また、見守り活動を行う防犯ボランティア団体等に提供されたりしているが、事案の概要を知らせるにとどまり、受信者側の具体的な対応に資するような効果的な情報提供となっていない側面もみられる。
 加えて、放課後児童クラブ・放課後子供教室について、利用している子供の来所・帰宅時の安全確保のためには、警察・学校との情報共有等が必須であるが、そもそも安全確保のためのマニュアルが整備されていないところも多い。
 このため、以下の対策に取り組む。

(1) 警察・教育委員会・学校間の情報共有

① 不審者情報等について、従来の教育委員会経由でのやり取りに加え、警察署と学校の間で連絡担当者を決めて直接共有することにより、プライバシーに配慮しつつ、より粒度の高い情報の共有を可能とし、具体的な対応に資するようにする。

② 学校が子供等から把握した不審者情報等についても、プライバシーに配慮しつつ、警察署が提供を受けて双方向での共有を行い、必要に応じ、警察の子供女性安全対策班(JWAT)による先制・予防的活動を実施する。

(2) 地域住民等による効果的な見守りや迅速な対応に資する情報の提供・発信

 警察からの情報提供・発信に当たっては、プライバシーに配慮しつつ、発生場所・被害態様に関し、見守りの配置・ルートの変更等に直接役立つようなより粒度の高い情報、保護者等が取り得る防犯対策、提供した情報に係る検挙情報等、受信者側の対応に資する情報についても、併せて提供・発信する。

(3) 放課後児童クラブ・放課後子供教室等の安全対策の推進

① 放課後等に児童が来所する放課後児童クラブ等においても来所・帰宅時の安全対策を講じるため、政府において、放課後児童クラブを始め、児童館や放課後子供教室においても利用可能な「来所・帰宅時における安全点検リスト」を改訂し、事業者や自治体に対する説明会等を通し、 その適切な利用を図る。

② 放課後児童クラブや放課後子供教室への来所・帰宅時において事件・事故等を未然に防ぐ観点や発生時に備える観点から、危機管理体制・安全確保の対策等について、放課後児童クラブ、放課後子供教室、警察等が、情報を共有し、十分に連携する体制を構築する。

4. 多様な担い手による見守りの活性化

 従来の見守り活動に限界がある中、「1人区間」等の「見守りの空白地帯」を埋めるためには、これまでの高齢者世代を中心とした活動の効率化・活性化を図ることはもとより、個人の負担が小さい形で、新たな主体が見守りに関わることを促し、見守りの担い手の裾野を広げる必要がある。
 このため、以下の対策に取り組む。

(1) 多様な世代や事業者が日常活動の機会に気軽に実施できる「ながら見守り」等の推進

① 見守りの担い手の裾野を広げるため、ウォーキング、ジョギング、買物、犬の散歩、花の水やり等の日常活動を行う際、防犯の視点を持って見守りを行う「ながら見守り」等を推進する。

② 企業によるCSR活動の一環として、事業者が、事業活動とは別に行う見守り等に加え、日常の事業活動を行いながら子供を見守る「ながら見守り」等を推進する。

③ 自動車運送業者等に対し、業務に支障のない範囲における「ながら見守り」等への協力、ドライブレコーダーの搭載等を依頼する。

④ 政府において、特に10月11日の「安全安心なまちづくりの日」、同日から同月20日までの間に実施される「全国地域安全運動」の期間において、登下校時における子供の「ながら見守り」等を推奨する。

⑤ 見守り活動等に取り組む高齢者、現役世代、事業者等に対する積極的な表彰、活動の周知・情報発信、子供を始めとする関係者との交流の場の提供等、地域における更なる理解や協力を確保するための取組を推進する。

(2) スクールガードの養成、防犯ボランティア団体の活動等の支援

① 学校内外における見守り活動等を行う学校安全ボランティア(スクールガード)の養成、スクールガードに専門的な指導等を行うスクールガド・リーダーの巡回の推進等により、登下校の見守りの担い手を確保するとともに、見守りの質の向上を図る。

② 青色回転灯装備車(青パト)によるパトロールを実施する防犯ボランティア団体に対し、講習会等の場を通じて、きめ細かい情報提供やパトロールの着眼点等を助言するなどにより、パトロールのより効果的な実施を支援する。

③ 防犯ボランティア団体が使用する青パトに装備するドライブレコーダに関する補助制度の例について、上記1.(2)の「登下校防犯ポータルサイト」等において紹介し周知する。

(3) 「子供110番の家・車」への支援等

① 危険に遭遇した子供の一時的な保護、警察への通報等を行うボランティアである「子供110番の家・車」について、運営主体である警察、教育委員会・学校、自治体等が、上記2.(1)の緊急合同点検の機会に実態を確認する。

② 実施主体に対し、従来の対応マニュアルを活用しつつ、不審者等を発見した時の対応について、より実践的・具体的な指導・研修を行うことに加え、平素からの能動的な役割を期待し、見守りへの協力や不審者情報等の受信を依頼するなど、支援を強化する。

③ 教育委員会・学校において、通学に係る指導等を通じて「子供110番の家」との連携を一層推進し、その活用を強化する。

5. 子供の危険回避に関する対策の促進

 登下校時における防犯対策については、子供を極力1人にしないという観点から、安全な登下校方策を策定し実施することが重要であり、例えば「見守りの空白地帯」における子供の危険を取り除くためには、様々な方策を組み合わせて対応する必要がある。
 また、小学校低学年の子供に多くの役割を期待することは現実的ではないものの、子供自身にも、発達の段階に応じて、危険予測・回避能力を身に付けさせるための防犯教育を行うことは不可欠である。
 さらに、こうした能力を身に付けた子供が社会人となり、社会全体の防犯意識の向上や安全で安心な地域社会づくりに寄与することも期待される。
 このため、以下の対策に取り組む。

(1) 防犯教育の充実

① 防犯の専門家の知見等も活用しつつ、例えば、地域安全マップ作りや防犯教室等を通じ、子供に危険予測・回避能力を身に付けさせる実践的な防犯教育を推進する。
 その際、上記4.(3)の「子供110番の家」への駆け込み訓練や「子供110番の家」の実施主体との顔の見える関係の構築等により、実践的な防犯教育と地域における防犯意識の向上の両面から、「子供110番の家」の活用を推進する。
 また、学校と警察が連携し、学年や理解度に応じ、紙芝居、演劇やロルプレイング方式等により、危険な事案への対応要領等について、子供が考えながら参加・体験できる防犯教室を引き続き開催する。

② 防犯教育の担い手である教職員の研修を充実させ、指導力・安全対応能力を向上させるとともに、見守り活動を行うスクールガード等に対し、最新の知見の伝達や意識啓発を行うこと等により、質の向上を図る。

③ 保護者が、直接的な見守り活動への参加が困難な場合であっても、自宅周辺の「1人区間」の状況や「子供110番の家」の所在地等を子供と確認すること、子供が把握した不審者情報等を聞き出すこと等、家庭においてこそ効果的に果たせる役割を踏まえた防犯の取組を推進する。

(2) 集団登下校、ICタグ、スクールバス等を活用した登下校の安全確保の推進

 政府において、防犯ブザー等の活用、集団登下校・スクールバス等による安全な登下校方策の実施、ICタグを活用した登下校管理を始めとするICTを活用した防犯対策等、全国の様々な好事例について、実施に当たっての留意点等と併せて、上記1.(2)の「登下校防犯ポータルサイト」等を通じて周知することにより、地域・学校の実情に応じた、より効果的な安全確保の取組を推進する。

6. 今後の検証

 上記1.で述べたとおり、登下校時における防犯対策の推進に当たっては、警察・学校・自治体の3者が、地域住民等と連携することが不可欠である。

 この考え方に基づき、本プランに掲げる各施策については、警察庁・文部科学省が中心となり、関係省庁(国土交通省・厚生労働省・内閣府・総務省)の協力を得て推進し、その実施状況の検証を確実に行う。

 具体的には、警察庁は都道府県警察が担う施策について、文部科学省は教育委員会・学校が担う施策について、国土交通省は都道府県・市区町村の防犯まちづくり担当部局が担う施策について、厚生労働省は放課後児童クラブ担当部局が担う施策について、それぞれ対応するとともに、特に警察庁は、従前から防犯対策全般を担ってきた立場を踏まえ、全体の取りまとめも行う。

 上記1.から5.の5つの柱について、それぞれの取りまとめ省庁は以下のとおりとする。

1. 地域における連携の強化: 警察庁・文部科学省
2. 通学路の合同点検の徹底及び環境の整備・改善: 文部科学省
3. 不審者情報等の共有及び迅速な対応: 警察庁
4. 多様な担い手による見守りの活性化: 警察庁
5. 子供の危険回避に関する対策の促進: 文部科学省