今月のニュース バックナンバー

令和4年2月号

職員だより

文部科学省 総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課

令和3年度「学校安全指導者研修会」「学校安全総合支援事業」全国成果発表会レポート

 令和4年1月28日(金)に、令和3年度「学校安全指導者研修会」並びに「学校安全総合支援事業」全国成果発表会がオンラインで開催されました。研修会には、161名、成果報告会には142名の参加がありました。
 「学校安全指導者研修会」は、各地域の研修講師や指導者等を対象に、効果的な研修会を実施するために必要な知識を学んでいただき、各地域における研修会の充実を図っていく目的で昨年度から開催しています。今年度は、岩手大学地域防災研究センター客員教授 越野 修三様を講師にお招きし、「学校安全推進のための教職員向け研修・訓練実践事例集」(文部科学省、令和3年6月)に掲載されている実践事例「マップ・マヌーバー」と「状況判断(ケーススタディ)」について紹介いただきました。

「マップ・マヌーバー」のデモンストレーション

 「マップ・マヌーバ―」は、地図や図面上で個人やグループ等を表す駒を動かしながら、時間経過に沿って災害時の行動を確認・検証する訓練方法です。講義では、スーパーでの地震対応のケースについて、越野様が進行役(ファシリテーター)、文科省職員が参加者(プレーヤー)となり、デモンストレーションも行いました。「状況判断(ケーススタディ)」では、児童の在校中の豪雨ケースについて、事前に検討してきた参加者からの発表も踏まえながら、校長の状況判断の思考過程や対策案の比較・結論などの説明をいただきました。
 参加者の方々からは、「マップ・マヌーバー」を活用して状況判断のシミュレーションをすることは、実際の場面での判断や対応する力を養えるものであると感じました」「状況判断の思考過程は、対応策の分析シートに記入することで、目標に対するメリットやデメリットが把握できてよい方法だと思いました」など、危機対応やマニュアルの見直しで役立つ研修会であったという内容の感想が多く寄せられました。各地域や各学校での研修に、「マップ・マヌーバー」や「状況判断(ケーススタディ)」を取り入れていただければと思います。

 「学校安全総合支援事業」全国成果発表会は、実践発表や情報交換等を通して、本事業の成果を全国に普及するとともに、今後の学校安全の取組の充実を図る目的で開催しています。
 成果報告会の講師、発表者の方々は、下記の通りとなります。

【基調講演】

テーマ 「これから求められる学校安全」
講師  東京学芸大教職大学院東京学芸大学教職大学院教授 渡邉 正樹氏

【実践発表】
「学校、地域、関係機関が連携した地域全体での防災教育~時代をつなぐ、横をつなぐ防災教育~」
 発表者 北海道教育庁学校教育局生徒指導・学校安全課 主査 風間 直樹氏
「ARを活用した実践的防災訓練~学校安全推進体制の構築の一事例~」
 発表者 神奈川県教育委員会教育局指導部保健体育課 指導担当主事 浦田 奈々美氏
「家庭や地域とともに取り組む防災教育~フェーズ・フリーを学校教育に取り入れて~」
 発表者 徳島県鳴門市教育委員会事務局学校教育課 主査(指導主事)佐古 高伸氏
渡邊先生の基調講演

 東京学芸大学教職大学院教授 渡邊 正樹様による基調講演では、「第3次学校安全の推進に関する計画の策定について」(答申案)※に関する内容を紹介いただきながら、危機管理マニュアルを見直し実践的なものにしていく必要性や、児童生徒等が自ら危険を予測し回避する能力を育成する安全教育の取組の充実、性犯罪・性暴力対策としての「生命(いのち)の安全教育」、学校における安全点検等の安全管理の取組の充実についてなど、これから求められる学校安全全般について分かりやすく説明いただきました。
 実践発表では、北海道教育委員会からは、小学生、中学生、地域住民が参加する地域合同避難訓練(「1日防災学校」)などの学校、地域、関係機関が連携した防災教育等の取組について発表いただきました。神奈川県教育委員会からは、県立西湘高校の取組を中心に、生徒参画型の実践的な防災訓練として、DIG(Disaster(災害)、Imagination(想像力)、Game(ゲーム)の略)やBLS訓練、津波を想定したAR訓練などの具体的な防災教育について紹介いただきました。鳴門市教育委員会からは、鳴門市立第二中学校の取組(地域と連携した被災後の避難所運営に協力できるための学習・訓練等)や、「日常時」と「非常時」の2つのフェーズをフリーにする、日常の取組が非常時にも役立つフェーズ・フリーの考え方を取り入れた防災教育の、2年間にわたる取組について紹介いただきました。
 グループ討議では、「『第3次学校安全の推進に関する計画』を見据えた来年度の取組等について」をテーマに、38のブレイクアウトルームにおいて、各地域での好事例や来年度の計画等、積極的に情報交換が行われました。全体交流では、ARやVRの安全教育への導入や、地域や関係機関等との連携など実践発表を行った教育委員会へも多くの質問が出されました。
 研修会や成果報告会を通じて得た知見や実践例等を参考に、全国における学校安全の取組の充実を図ってほしいと期待しております。

 ※講演時は、令和4年1月14日の中央教育審議会初等中等教育分科会(第134回)の「第3次学校安全の推進に関する計画の策定について」(答申案)を基にご説明いただきました。成果報告会後の令和4年2月7日の中央教育審議会総会において、「第3次学校安全の推進に関する計画の策定について」(答申)は、文部科学大臣に答申されました。