今月のニュース バックナンバー

令和3年7月号

職員だより

文部科学省 総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課

チーム学校安全 リレー投稿⑤ ~秋田県教育委員会における学校安全の取組~

1 はじめに

 秋田県に甚大な被害をもたらした日本海中部地震から38年が経過し、幼児児童生徒の保護者や、学校で指導にあたる教員の多くが震災を経験していない世代になってきています。また、東日本大震災からも10年が過ぎ、震災の記憶や教訓の風化が懸念されており、震災の教訓を伝え、未来へ生かすとともに、幼児児童生徒の命を確実に守るという強い覚悟をもたなければならないことを再認識しています。
 秋田県教育委員会では、東日本大震災の教訓を踏まえ、平成24年度より保健体育課に防災教育・安全班を組織するとともに、研修の充実・情報の充実・地域連携の充実を柱とした防災教育推進事業を展開してきました。平成27年度からは災害安全に、交通安全、生活安全を加えた学校安全推進事業へと内容を拡充し、全庁体制で子どもたちの安全・安心を確保するとともに、「自分の命は自分で守ることのできる幼児児童生徒の育成」を目指して取り組んでいます。今回は、その中から特色ある取組を御紹介します。

2 学校安全推進委員会

 児童生徒等の安全な学校生活を守るために、平成27年度に「学校安全推進委員会」を立ち上げ、生活安全・交通安全・災害安全の学校安全三領域について協議し、県内の状況や施策の情報共有を図るとともに、地域や関係機関等と連携・協働した安全教育の推進や安全管理の徹底など、学校安全の取組を全庁体制で支援しています。
 また、生活安全・交通安全・災害安全の三領域それぞれの実務担当者で組織する専門部会も組織し、学校安全推進委員会を踏まえた各事業の客観的な評価を行い、秋田県教育委員会としての学校安全の在り方について検討しています。

令和3年度学校安全推進委員会委員一覧

学校安全推進委員会委員一覧 学校安全推進委員会委員一覧
3 学校安全指導者研修会
学校安全指導者研修会

 県内全ての公立学校の管理職を対象にした安全管理指導者研修会の他、学校安全教室推進事業(文部科学省委託事業)を活用して、各学校の学校安全の中核となる教職員を対象に、学校安全の三領域それぞれに特化した研修会を開催しています。
 教職員のキャリアステージに応じた資質・能力の向上が図られるとともに、最新情報を伝達することができ、各校における校内研修の充実につながっていると感じています。
 また、三領域に特化した研修会では自校の危機管理マニュアル(研修会の内容に該当する領域)を持参してもらい、他校のマニュアルと見比べながらグループで意見交換する時間を設定し、マニュアルの見直し・改善のヒントが得られるよう工夫しています。

令和3年度の研修会の講師

○安全管理指導者研修会 令和3年5月6日(木)【中止】

講師: 学校安全教育研究所  代表  矢崎 良明 氏
講師: 秋田地方気象台  次長  大髙 隆広 氏  ※9月の研修会に変更

※新型コロナウイルスの感染状況を考慮し、開催を中止した。研修会資料を各市町村教育委員会と各学校に配布し、校内研修等での活用を依頼した。

○交通安全指導者研修会 令和3年7月9日(金)【学校安全教室推進事業】

講師: 東北工業大学総合教育センター  教授  小川 和久 氏 【オンライン】
講師: 秋田県警察本部交通部交通企画課  課長補佐  髙橋 俊貴 氏
講師: 一般社団法人日本自動車連盟秋田支部推進課事業係  係長  横岡  彰 氏

○災害安全指導者研修会 令和3年9月6日(月)【学校安全教室推進事業】

講師: 秋田大学地方創生センター  教授  水田 敏彦 氏
講師: 秋田地方気象台  次長  大髙 隆広 氏
講師: 秋田県自主防災アドバイザー(防災士)    五十嵐恒憲 氏

○生活安全指導者研修会 令和3年11月11日(木)【学校安全教室推進事業】

講師: 一般社団法人セーファーインターネット協会  主席研究員  高橋 大洋 氏
講師: 秋田県警察学校教官(予定) 
4 学校安全外部指導者派遣事業

 秋田大学、自衛隊秋田地方協力本部、秋田地方気象台、秋田河川国道事務所、秋田県警察、県総合防災課と連携し、専門知識を有する外部指導者を各学校等に派遣し、講演や演習等の具体的な指導を行うことにより、学校における安全教育の充実を図っています。
 児童生徒等への指導だけでなく、教職員の研修としても活用されていますし、保護者も参加できるプログラムもあるので、PTA等の学校行事に併せて事業を活用している学校もあります。
 昨年度はコロナ禍の影響もあり30校程度の派遣に留まりましたが、例年であれは50校程度の学校等に派遣しています。

外部指導者: 秋田大学
派遣先: 小学校
指導内容: 防災ウォーキング
防災マップ作り
外部指導者: 県総合防災課
派遣先: 中学校
指導内容: クロスロード
外部指導者: 自衛隊秋田地方協力本部
派遣先: 特別支援学校
指導内容: 装備品展示と体験
防災講話
非常食・災害時用レトルト食品の試食

5 学校安全学校訪問
児童目線の通学路危険箇所の掲示
児童目線の通学路危険箇所の掲示

 年間30校程度の学校に保健体育課指導主事が訪問し、学校安全計画、危機管理マニュアル、避難経路・場所・方法等の確認と助言を行い、各学校における安全教育・組織活動の充実及び安全管理の強化を図っています。
 訪問の実施結果を三領域ごとにまとめ、優れている点や課題が見られる点等を整理し、関係各課等と情報共有を図るとともに、校内巡回や管理職等との話し合いで見たり聞き取ったりした好事例等に関しては、研修会などで積極的に情報発信するよう努めています。


6 学校安全総合支援事業【文部科学省委託事業】
学校安全総合支援事業 地域連携安全・安心推進事業(災害安全) 通学路安全推進事業(交通安全)

 学校安全総合支援事業(文部科学省委託事業)を活用して、災害安全教育を主に、地域等と連携して児童生徒等の安全教育に取り組む「地域連携安全・安心推進事業」と、交通安全教育を主に、関係機関等と連携して児童の安全教育に取り組む「通学路安全推進事業」を、推進地域とモデル校を指定して実施しています。
 モデル校の取組に関しては、年度末に右のような実践事例集を作成して各市町村教育委員会や各学校に配布し、事業の成果を共有しています。

(1)地域連携安全・安心推進事業 推進地域(能代市)におけるモデル校(第五小学校、能代東中学校)の取組

① 安全教育の充実に向けた取組

  • ショート訓練(授業中、休み時間、給食の時間、清掃の時間、登下校時)を実施したことで、適切な避難行動について自分で考えるようになり、防災意識の向上につながった。(小学校)
  • 日本赤十字社秋田県支部の方を講師に、救急法講習を実施し、災害時に必要な基礎的な知識や技能を身に付けることができた。(中学校)
  • 小学生が交通安全領域と生活安全領域、中学生が災害安全領域を担当し、合同で自治会別に地域安全マップを作成した。その後、地区ごとに分かれて危険箇所について発表したことで、地域住民と情報共有や意見交換を行うことができた。
  • 学校、地域住民、能代市防災危機管理室、能代市市民福祉部が連携し、避難所開設訓練を実施した。新型コロナウイルス感染症に配慮した開設訓練が実施できたことで、今後発生が懸念されている複合災害への対応を考える機会となった。
  • 防災小説の授業を実施したことで、避難訓練や防災対策を自分事と捉え、災害をイメージして行動したり、備えたりする態度を育てることができた。(中学校)

② 教員の資質向上に向けた取組

  • 県主催の研修会や、独立行政法人教職員支援機構主催の学校安全指導者養成研修(オンライン)等にモデル校の中核教員を参加させた。その後、校内研修会を実施して全職員で研修内容を共有した。
  • 能代市教育委員会主催の学校防災教育研修会において、モデル校の中核教員が講師となり自校での取組やこれまでの研修内容について発表したことで、能代市内の教職員が成果と課題を共有することができた。
自治会別に作成した地域安全マップ危険箇所を発表して情報共有
能代中学校 防災小説(生徒作品)

(2)通学路安全推進事業 推進地域(南秋田郡)におけるモデル校(五城目小学校、八郎潟小学校、大潟小学校、井川義務教育学校[前期課程])の取組

① 安全教育の充実に向けた取組

  • 三次元CGで道路を横断する体験ができる歩行環境シミュレータ「わたりジョーズ君」を活用し、夕暮れや降雪時など、様々な状況下での児童の車道横断時の動きを測定した。車道横断に必要な歩行能力と判断能力をチェックすることで、児童一人一人に応じた指導を行うことができた。
  • 児童や教職員が、通学路安全対策アドバイザーの助言を受けながら通学路安全マップの作成に取り組んだことで、発達の段階に即したマップを作成することができた。

② 教員の資質向上に向けた取組

  • スクールガード・リーダーや道路管理者等とモデル校の中核教員が協議する機会を設定したことで、通学路の安全対策について協力していく体制を構築できた。
  • モデル校の中核教員が通学路安全対策アドバイザーや警察、道路管理者等と一緒に通学路の安全点検を実施したことで、危険箇所の合同点検において点検時の着眼点や対策を具体的に学ぶことができた。
関係者が顔を合わせての協議
通学路合同点検
歩行環境シミュレータ「わたりジョーズ君」を活用した交通安全教育
児童目線での危険が書き込まれた通学路安全マップ
7 おわりに

 新型コロナウイルス感染症拡大という、世界の歴史に爪痕を残す未曾有の危機的状況により、学校における一斉休業、様々な活動の休止や中止など、今まで経験したことのない事態が続き、心の状態が不安定な子どもやストレスが増大している子どもたちの増加が懸念されます。今後は、新型コロナウイルス感染症による複合災害への対応も含め、ウイルスと共生しながら各種教育活動を展開していくという、私たちの意識改革がこれまで以上に求められることになると捉えています。
 令和3年度は「第2次学校安全の推進に関する計画」の最終年度となることから、秋田県教育委員会としましても、計画で示された12の施策について検証するとともに、学校の実態や地域の実情に応じた学校安全計画や危機管理マニュアルの見直しをはじめ、事件・事故等の未然防止や災害発生時の適切な対応が行われるための組織的な体制を整備しながら、各学校における学校安全に関する取組がより充実するよう事業を展開していきたいと考えています。

(秋田県教育庁保健体育課 防災教育・安全班 指導主事 菊池 勇拓)