今月のニュース
令和3年3月号
職員だより
文部科学省 総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課
チーム学校安全 リレー投稿④~兵庫県教育委員会における学校安全の取組~
1 はじめに
本県では、予測困難な事件や事故に対して、児童・生徒が主体的に行動できるよう、学校安全教育の普及と発展に努めております。学校管理下における安全管理及び安全教育の充実が、日々積み重ねられるよう、今後さらに推進していく所存です。
今年度は、新型コロナウイルス感染症による影響が全国各方面に大きく波及する中、本来の危機管理に目を向け続け、守るべき命の尊さを訴え続けるとともに、自ら考え行動できる児童生徒を育成するため、感染症対策を徹底した上で、例年どおり全ての事業を遂行しております。特に今年度は、文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課より、ご来県頂き、指導、助言・講演等をいただいたことにより、本県の安全教育の推進がより一層、充実したと確信しております。本当にありがとうございました。
それでは、今年度実施した、事業内容を紹介させて頂きます。
2 本県の学校安全推進について
第3期ひょうご教育創造プラン(兵庫県教育基本計画) ~健康教育・安全教育の推進~
(1) | 学校安全に関する教職員の資質・能力の向上を図る。 |
(2) | 体系的な安全教育の充実及び家庭・地域の医療機関等との連携による保健管理の充実を図る。 |
(3) | 自らの安全を守るための安全教育の推進を図る。 |
3 今年度の学校安全に関する取組について
○学校安全総合支援事業(文部科学省委託事業)
①稲美町(拠点校:県立東播磨高等学校)
稲美町は公共交通機関が発達しておらず、拠点校においては全生徒が自転車通学をしており、登下校時の交通安全の確保が重要な課題である。また、地域内にはため池が多く、災害発生時の対応も大きな課題となっている。さらに、拠点校である県立東播磨高等学校野球部に、第93回選抜高等学校野球大会にも選出される等、各種の運動部活動等が全国規模の大会で活躍しており、生活安全上の傷害予防等にも取り組む必要がある。
学校名 |
重点的に取り組む領域 |
||
---|---|---|---|
拠点校 | 県立東播磨高等学校 | 交通安全、生活安全、災害安全 | |
モデル地域内の学校 | 学校種 | 学校数 | 学校名 |
幼稚園 | 0 校 | ||
小学校 | 2 校 | 天満小学校、加古小学校 | |
中学校 | 2 校 | 稲美中学校、稲美北中学校 | |
高等学校 | 1 校 | 東播磨高等学校 | |
特別支援学校 | 0 校 |
PTA,地元警察署、交通安全普及協会とも連携を図り、地域合同の交通安全指導、自転車安全教室等を実施、さらに、モデル地域全体において、地元自治会、PTAと合同で避難訓練を実施し、災害時の避難所運営支援についても体制を構築した。
事業の円滑な実施のため、実践委員会を開催して、学校安全アドバイザーからモデル地域内の学校の取組や連携について指導助言をいただくとともに、事業終了後も学校間の連携が継続して行える場として位置付けた。
また、今年度は、(一財)日本交通安全教育普及協会と連携し、本県の自転車安全教育モデル事業も兼ねて実施した。文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課、森本晋也安全教育調査官にお越し頂き、「学校に求められる交通安全教育」と題してご講演頂いた。
②家島町(拠点校:県立家島高等学校)
四方を海に囲まれた家島は、姫路市街と結ぶ交通路は船舶しかなく、海とともに生活をするといった、ある意味孤立された環境にある。細い道が多く、信号機が1基も設置されていない中で、島民の多くは原付バイクを利用している。そのため幼児児童生徒が危険な状況に遭うことも多い。また少子高齢化が進む中で、島の高齢者が被害者あるいは加害者となる事故も増加している。
学校名 |
重点的に取り組む領域 |
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---|---|---|---|
拠点校 | 県立家島高等学校 | 交通安全・災害安全 | |
モデル地域内の学校 | 学校種 | 学校数 | 学校名 |
幼稚園 | 1 校 | 家島幼稚園 | |
小学校 | 1 校 | 家島小学校 | |
中学校 | 1 校 | 家島中学校 | |
高等学校 | 1 校 | 東播磨高等学校 | |
特別支援学校 | 0 校 |
●幼小中高地域合同避難訓練
10月14日(水)、幼小中高地域合同避難訓練を本校で実施。今年は新型コロナウイルス感染症対策を徹底して実施した。例年自衛隊も参加していたが、残念ながら国の規定により不参加となったが、家島消防署・幼稚園・小学校・中学校・宮区会・体操教室「あじさい」・地域包括支援センターの協力のもと実施できた。
●交通安全教室
11月18日(水)、拠点校において(一財)日本交通安全教育普及協会及び西宮北ドライバーズスクールの方々を講師として招き、本校生徒、家島幼稚園の園児、宮区会、真浦区会、体操教室「あじさい」・地域包括支援センターの方々を対象に交通安全教室を開催した。10月に実施した幼小中高地域合同避難訓練と同様、新型コロナウイルス感染症対策を徹底して実施した。例年と異なり、午前中に講義、グループワーク、体験及び幼児・高齢者への指導の留意点を学習、午後より幼稚園児及び地域の高齢者の方々に参加していただいた。幼稚園児には道路歩行指導や自転車乗車指導を行った。高齢者の方々には体力の衰えを自覚していただくことを中心に講義を行った。
交通安全教室の成果として、生徒達が考えた交通安全に関する標語を元にポスターを製作し、島内に掲示して啓蒙に努めたい。
こうした活動において、家島高校中核教員は、幼・小・中・地域と連携して取組が充実するよう計画運営し、姫路市役所や地域区会(真浦区会、宮区会)、飾磨警察署、姫路市消防署、自衛隊等との協力体制を推進する。また他校種の中核教員と連絡を密にとり、円滑な情報伝達ができる関係やシステムを日常的に構築している。
そして、家島高校生徒の交通マナー向上に努めるとともに、交通安全教室では、高校生が園児児童生徒に対して指導を行い、合同避難訓練では、高齢者の活動を補助することで、地域のリーダーとしての自覚を促し、地域からの信頼を得るようにしている。こうした取組を発表し、県内全域に啓発することで、学校安全に必要な知識等の更なる習得を行う。さらには、実践委員会等を活用して情報を共有し、自校の安全教育の取組に生かし、学校間の系統性や連携を意識した防災・学校安全マニュアルの改訂を進めていく。
③出石町(拠点校:県立出石特別支援学校)
市街地から離れた立地と、広い通学区域を持ちながらも特別支援学校という校種から、教職員の目も自校のみに向きがちである。教職員の安全への意識を高め地域との連携を図り、いっそうの生活安全全般、特に防犯の面から、安全教育に取り組むことに重点をおいている。教職員が児童生徒の安全に取り組むことは言うまでもないが、児童生徒が自分自身で命を守るという視点から交通安全や災害安全に取り組むという面も重視している。
学校名 |
重点的に取り組む領域 |
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---|---|---|---|
拠点校 | 出石特別支援学校 | 防犯を含む生活安全 | |
モデル地域内の学校 | 学校種 | 学校数 | 学校名 |
幼稚園 | 0 校 | ||
小学校 | 1 校 | 小野小学校 | |
中学校 | 1 校 | 出石中学校 | |
高等学校 | 1 校 | 出石高等学校 | |
特別支援学校 | 1 校 | 出石特別支援学校みかた校 |
アンケートの結果、教職員の意識改革にはなったが、生徒の意識の変化が少ないと感じている教職員が多いことがわかった。今後の対応について下記のとおり検討している。
- 【中核教員の資質向上に係る取組】
- 講話等での情報提供、実践委員会での各校の情報共有と協議、発表を通して資質向上を目指す。
- 【各校の中核教員が担う役割について】
- 安全に関する計画の立案、行事の企画実施、研修の伝達等。
- 【事業目標を達成するために、拠点校を中心としたモデル地域内の学校が本事業で行う安全教育・安全管理に係る取組】
- 捜索訓練、スクールバス安全講習会、不審者対策訓練、救命救急法講習、ケイタイスマホ安全教室、防犯についての公開授業等、教職員向けと児童生徒向けに実施する。外部人材の活用を積極的に行う。
- 【拠点校と拠点校以外のモデル地域内の学校との連携】
- モデル地域内での不審者情報の共有、通学路合同点検、安全についての合同行事実施等を通じて、教職員間の意識の向上、地域貢献を目指す。
- 【委託事業終了後、取組を継続して実施するに当たっての見通し】
- それぞれの取組を一回で終わる取組ではなく、可能な限り持続できるよう内容を柔軟に変化させ対応していく。
●特別支援学校における安全教育の推進について
特別支援学校は、地域全体での安全教育に入ることが少ない。本事業のおかげで、地域と共に安全教育を進めることでき、児童生徒自身が自ずと、安全に行動し、周囲との関係性を意識するなど、大変貴重な教育活動の一つとなった。教職員や地域関係者も意識改革がなされたと感じている。
④上郡町(拠点校:上郡町立山野里小学校)
上郡町通学路交通安全プログラムに基づく合同点検及び安全対策の実効性を高めるため、以下の取組によりPDCAサイクルによる事業の継続と成果の向上を地域全体が一体となってめざす体制作りを目指している。
3小学校区で構成される町域すべてにおいて取組がなされるよう、現在定着化した重点地区のローテーションを継続しており、重点地区内に所在する、山野里小学校が拠点校となり他校を牽引する取組をめざす。町内唯一となる上郡中学校は、通学路が全町域に及ぶため、今年度は山野里小学校区のエリア内を対象として取り組む。ただし、緊急性のある場合は重点地区以外においても取組を実施する。
学校名 |
重点的に取り組む領域 |
||
---|---|---|---|
拠点校 | 山野里小学校 | 交通安全 | |
モデル地域内の学校 | 学校種 | 学校数 | 学校名 |
小学校 | 2 校 | 上郡小学校、高田小学校 | |
中学校 | 1 校 | 上郡中学校 |
学校安全アドバイザ-による通学路巡回活動をすべての小学校区で実施し、アドバイザーの助言を活かした登下校指導により児童生徒の安全意識の向上を図った。
また、重点地区(拠点校)を基本として実施する合同点検、対策検討、対策実施後の効果検証においてもアドバイザー等実践委員会構成員の専門的見地から的確な助言を得ており、合同点検については、交通安全点検と合わせて「登下校防犯プラン」に基づく防犯点検を兼ねて効率的に実施した。
拠点校並びに各校の取組と成果については、実践委員会のほか校園長会、学校部会、各地区青少年健全育成研修会(懇話会)の機会を捉えて広く共有を図り、校長及び中核教員が中心となって普及に努めることができた。
拠点校の中核教員に対しては、学校安全講習会等の研修参加を促し、有益情報の収集や資質向上の機会を確保してもらっている。
特に、各地区で開催される青少年健全育成研修会(懇話会)は、地域住民や諸団体との関係を深め、地域ぐるみの推進体制を築く貴重な機会となる。各校の管理職や中核教員は円滑に地域全体の事業参画を誘引するよう努め、地域住民等の有意義な提案や意見を十分に踏まえつつ毎年実施する通学路交通安全プログラムの取組の質を高めていく。
4 最後に
今回、このような機会を頂いたことで、本県の安全教育の推進を改めて見直すことができた。特に様々な地域の特色を活かした方法や、拠点校を中心としたアイデアなどは、普段考えることがないような視点で実施されていた。その地域に根付いた学校において、今後は、児童生徒が発案できるような、きっかけ作りと、発案した内容が実現できる、組織体制の充実が必要不可欠と考える。
また、地域一体となって取り組むことができる地域を選ぶだけではなく、市町教育委員会との連携はもとより、地域に根付いた人材の力を軸に、拠点校となる学校長、教頭をはじめとした柔軟な組織力を加えた、新たな組織体制を構築することも、我々の責務と考える。
これからも、様々な可能性をもって、本県の安全教育を推進していきたい。
(兵庫県教育委員会事務局体育保健課 保健安全・食育班 指導主事 西本 高丈)