今月のニュース

令和2年12月のニュース目次

令和2年12月号

職員だより

文部科学省 総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課

学校での突然死を0に!もしもの時はためらわず救命処置を行いましょう

 日本スポーツ振興センターの災害共済給付の資料によれば、平成22年度から令和元年度までの10年間で死亡見舞金が支給された件数は615件で、そのうち突然死は276件と約45%を占めます。
 また、公益財団法人日本学校保健会「学校における心肺蘇生とAEDに関する調査報告書(平成30年11月)」によると、平成24年度から平成28年度までの5年間で、学校管理下で児童生徒にAEDのパッドを貼った症例は206件ありました。
 各学校では、事故等発生時の危機管理マニュアルを作成し、教職員の心肺蘇生法やAEDの研修を実施していることと思います。事故等による傷病者を発見した際には、教職員の迅速で適切な応急手当を行うことが重要です。今月号では、応急手当の中でも特に一次救命処置について紹介しますので、参考にしてください。

 一次救命処置とは、心臓や呼吸が止まってしまった人を助けるために胸骨圧迫や人工呼吸による心肺蘇生を行ったり、AEDを使ったりする緊急の処置のことを指します。心臓と呼吸が止まってから時間の経過とともに救命の可能性は急激に低下しますが、救急隊を待つ間(平成30年度の平均は8.7分)に居合わせた市民が救命処置を行うと救命の可能性(1か月後の社会復帰率)が2倍程度になることがわかっています。(救命蘇生法の指針2015(市民用)より)

教職員による救命の事例

 体育の授業中に生徒の一人が突然倒れた。体育教諭は近くの生徒たちに、保健室と職員室へ連絡し、自動体外式除細動器(AED)をもってくるように指示。「体育活動時等における事故対応テキスト:ASUKAモデル」の講義を聞いていた養護教諭は直ちに心停止と判断し胸骨圧迫を実施しながらAEDを使用。生徒は後遺症なく学校に復帰することができた。

 上記は、実際に起きた一次救命処置の事例です。この事例では、以下の点が救命のポイントとなりました。

  • 体育教諭が素早く近くにいた生徒に適切な指示(養護教諭、他の教員への連絡、AEDの確保)を出すことができた
  • 養護教諭は倒れた生徒の容体を直ちに判断し、胸骨圧迫の実施とAEDの使用を開始した

 運動中の心停止は人前で起こることが多く、電気ショックが効果的で、適切に対応すれば後遺症を残すことが少ないという特徴があります。学校内での心停止の80%以上が運動中に生じています。
 いざというときのために、学校職員や生徒は一次救命処置を習得し、学校では運動を行う場所の近くにもAEDを設置していつでも使える体制を整えておくことが大切です。
 以下のリーフレットを参考に、危機管理体制の整備や学校関係者への救命教育の推進、傷病者発生時の判断・行動チャートをご確認ください。

学校での突然死を0に!(リーフレット)
死線期呼吸(あえぎ呼吸)とけいれんについて

 なお、厚生労働省では新型コロナウイルス感染症の流行を受け、今年5月に救急蘇生法の指針の追補を作成していますので、こちらも参考にしてください。

学校での安全教育における心肺蘇生法

 今回の学習指導要領改訂により、高等学校学習指導要領では「心肺蘇生法などの応急手当を適切に行うこと」、中学校学習指導要領では「心肺蘇生法などを行うこと」と明記されました。

【高等学校学習指導要領(平成30年告示)における応急手当についての記載】
(保健分野)

(2) 安全な社会生活について,自他や社会の課題を発見し,その解決を目指した活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア   安全な社会生活について理解を深めるとともに,応急手当を適切にすること。
(イ) 応急手当
 適切な応急手当は,傷害や疾病の悪化を軽減できること。応急手当には,正しい手順や方法があること。また,応急手当は,傷害や疾病によって身体が時間の経過とともに損なわれていく場合があることから,速やかに行う必要があること。心肺蘇生法などの応急手当を適切に行うこと。

【中学校学習指導要領(平成29年告示)における応急手当についての記載】
(保健分野)

(3) 傷害の防止について,課題を発見し,その解決を目指した活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア   傷害の防止について理解を深めるとともに,応急手当をすること。
(エ) 応急手当を適切に行うことによって,傷害の悪化を防止することができること。また, 心肺蘇生法などを行うこと。

 安全教育で心肺蘇生法等の応急手当を取り上げることにより、個人生活における健康・安全に関する基本的な技能を身に付けることが期待されます。
 以下に生徒による救命の事例を紹介します。生徒は、学校での実践的な授業を生かし、素早くAEDを使用することができました。

沖縄県立高等学校生徒による救命の事例

 今年8月、海岸で意識を失っていた女性に自動体外式除細動器(AED)を装着するなどして救命。当該高校では、保健体育と家庭科(保育)の時間で救急救命について授業を行っており、保健体育の授業では、訓練用のAEDや人体人形を用いた実践的な授業を行っている。また、家庭科(保育)の授業では、消防署より講師を招いて「普通救命講習会Ⅲ」を受講させ、「受講証明書」を受け取ることで生徒の自信につなげる工夫をしている。

 自分の目の前で家族や友人、あるいは知らない人が突然倒れたらきっと驚くでしょう。その時に迅速な一次救命処置ができるかどうかが、命を救うこと、あるいは社会復帰の鍵になります。反応(意識)がない、あるいは「わからない」ときは直ちに119番通報とAEDの手配をし、普段どおりの呼吸かどうかわからず心停止の判断に迷うときは心肺蘇生を開始してください。救急隊到着までの短時間であっても、救命の可能性は高くなるのです。そのことを胸に刻み、心肺蘇生法やAEDの使用方法などを学んでいただければと思います。