今月のニュース バックナンバー

令和2年11月号

職員だより

文部科学省 総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課

教訓を生かし、学校事故の発生を未然に防ぐために

  令和2年10月5日付事務連絡で、各学校において「『学校事故対応に関する指針』に基づく詳細調査報告書の横断整理」(以下「報告書」という。)を学校事故防止のために活用いただくようお願いしました。
  この報告書は、平成28年3月に公表された「学校事故対応に関する指針」(以下「指針」という。)に基づいて、これまでに文部科学省に提出された学校での重大事故に係る詳細調査報告書について要約し、横断的に俯瞰できるよう整理したものです。詳細調査報告書に記載された事故発生の要因や今後の対策について、m-SHELLモデル(下記参照)の考えに基づき整理した各事故事例の概要も記載しています。
  今月号は、これまでの学校事故の教訓を、これからの学校事故の未然防止につなげていくために、報告書の内容と研修での報告書の活用例を紹介します。

資料1
「学校事故対応に関する指針」に基づく詳細調査報告書の横断整理の公表
報告書の内容について

  報告書には、「各事故の概要」、「事故発生の要因と事故対応の的確性」、「調査委員会による事故の検証」、「提言された対策」、「詳細調査報告書の記載方法」等について記載しています。詳細調査報告書の横断整理の際、事故発生の要因分析の方法として、m-SHELLモデルを参考としました。m-SHELLモデルとは、東京電力ヒューマンファクターグループが提唱した、ある事故が発生した場合にそれに関わる人や周囲の環境を分析し、事故発生の背後にある要因を分析する手法です。本調査では、m-SHELLモデルを学校事故に当てはめて整理しました(資料2参照)。

資料2
m-SHELLモデルによる事故の要因分析について

  「各事故事例の概要」では、詳細調査報告書に記載されている個々の事例について、事故の内容や事故が発生した際の状況、事故の発生要因をm-SHELLモデルを活用して整理しています。
  「事故発生の要因と事故対応の的確性」では、事故が発生した背景の要因、事故直後の対応、保護者への対応、他の児童生徒等へ対応について整理しています。
  「調査委員会による事故の検証」では、調査委員会の構成員と検証期間、検証前及び検証段階における保護者への対応等について整理しています。
  「提言された対策」では、学校事故防止に向けて今後教訓となると考えられる事項について整理しています。
  「詳細調査報告書の記載方法」では、今回の調査を通じて、学校事故に係る情報を横断的に整理分析するためには、様々な事例を比較しやすい形で収集することが必要であることが認識されたことから、詳細調査報告書の記載項目例を提言しました。巻末には、詳細調査報告書の記載フォーマット(例)を記載しています。

報告書の活用について

  9月25日に行われた長野県教育委員会の「学校事故対応に関する研修会」において、文部科学省からの講義「学校安全の現状と課題」の中で、報告書を活用した演習(感染症予防のためグループ協議は行わず、個人作業中心で実施)を行いましたので紹介します。
  参加者は全校種からで管理職が多く、本研修会では熱中症事故防止の講義が行われましたので、本報告書に掲載されている事故事例から事故③(高校サッカー部活動中の熱中症事故)と事故⑬(小学校校地外における死亡事故)について学習しました。
  最初に、事故の概要(事故発生時期、活動種別、事故発生の状況等)について確認しました。そして、m-SHELLモデルで整理された事故が発生した要因について、ポイントとなるところを空欄にして、どのようなことが要因だったのかを考え、発表しました。次に、空欄に入る言葉を確認して、どのようなことが事故防止の対策として提言されたかを考え、発表しました。最後に、事故概要のプリントを配布して提言された内容について確認しました。提言の内容には、学校安全計画や危機管理マニュアルの作成・改善、学校安全の研修の実施、指針の周知や安全管理の徹底など、学校安全の基本的事項が多くあることを確認しました。
  学校の職員研修で行う際には、提言の確認後(もしくは途中でも可)に、自校での状況はどうか、課題や対策について話し合い、教職員の安全への意識向上や日常的な安全管理の充実につなげてください。

資料4(受講者の感想)
最近、日帰りハイキングを行ったところです。m- SHELL による要因分析はヒヤリとした場面を振り返ることにも有効で行事のまとめ等にも生かしたいと思いました。「起きる前に1つでも」取り組みたいと思います。(小学校 教頭)
普段からどれだけシミュレーションして全職員で考えておくかが大切であると思うので、できることをやっていき、子どもの尊い命を守っていきたい。(小学校 養護教諭)
部活動、授業、また日々の学校生活の中で見直すべき点がいくつもあることがわかった。校内だから安全というだけではなく、その中で起こる危険を自分の中で想定して臨んでいきたい。(中学校 教諭)
実際の事例から学ぶことができ、日々の学校生活の中でも職員間で意識しながら共有し、備えておくことが必要と感じました。現場で生きるマニュアルでなければならないと思いました。(中学校 事務職員)

  指針とともに報告書を活用して、自校の教員研修や各種マニュアル、安全教育や安全管理、緊急時対応の体制整備などを見直し、今後の事故防止や事故発生後の適切な対応につなげるようお願いします。