今月のニュース バックナンバー

令和2年10月号

職員だより

文部科学省 総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課

  近年、気象災害による被害が激甚化する中で、学校においてこれまで以上に気象状況に応じた適切な対応が求められています。また、コロナ禍における学校安全の教員研修について、感染症予防を考慮しながら、効果的な研修の在り方が求められています。
  このような中、今月の職員だよりは、シリーズ「チーム学校安全 リレー投稿」の2回目として、茨城県教育委員会より寄稿いただき、原子力災害への備えをはじめ、気象災害に関わる学校への支援、コロナ禍における学校安全の研修についてご紹介いただきました。各地域での取組の参考にしてください。

チーム学校安全 リレー寄稿② ~茨城県教育委員会における学校安全の取組~

  茨城県教育委員会の取組について、今回は、「原子力災害への備え」、「臨時休業判断の支援」、「コロナ禍での学校安全研修」の3つの取組について御紹介します。

○原子力災害への備え

  茨城県の県央地域には、原子力発電所をはじめ原子力燃料加工施設や試験・研究施設が数多く立地しています。中でも「東海第二発電所」については、その周囲30kmの範囲内に、県庁所在地である水戸市をはじめ14市町村に約94万人が暮らしています。公立学校も県全体の約3割が所在し、万が一災害が発生した場合の対応について備えておかなければなりません。
  茨城県教育委員会では、平成11年の核燃料加工会社で発生した臨界事故を教訓に、「学校における原子力防災マニュアル」を作成しました。その後、国の指針や県の防災計画等に即した内容に改める必要があったため、平成31年1月に、「学校における原子力災害対応の手引」を新たに作成しました。
  各学校では手引を参考に、原子力災害対応マニュアルの作成・見直しを進め、万が一の場合に備えています。

原子力災害発生時における学校の対応(概要)

○臨時休業判断の支援

  茨城県では、平成27年9月の関東・東北豪雨災害をはじめ、令和元年東日本台風(台風19号)などによる被害を受けました。さらに、近年、局地的大雨や集中豪雨による気象災害が全国的に頻発化・激甚化している状況を踏まえると、児童生徒等の安全確保について、より一層意識を高めなければならない状況にあります。
  茨城県教育委員会では、校長の臨時休業に関する速やかな意思決定に資するため、その基本的な考え方や留意点についてまとめるとともに、気象情報収集のための参考資料や臨時休業に係るチェックシートを県立学校向けに作成・周知しました。(令和2年9月)
  基本的な考え方は、「児童生徒等の安全確保を最優先させることを念頭に、気象庁が発表する防災気象情報のうち、学校所在市町村において、大雨警報、洪水警報、暴風警報のいずれか又は複数が発表される可能性が高い場合(又は発表されている場合)は、臨時休業の実施を積極的に検討する。」としました。(特別警報の場合もこれに準じます。)
  参考資料については、特に、気象庁が発表する「早期注意情報(警報級の可能性)」と市町村単位で発表される「気象警報・注意報」について詳細に記載し、アクセス先のQRコードも掲載しました。
  チェックシートについては、①臨時休業を判断する際の留意点、②臨時休業決定後の対応、③通常登校時に気象状況が悪化した場合の対応、④平常時における備え、の4項目について整理し、学校所在地域の災害リスクや在籍児童生徒等の実情に応じて、各学校が改編して活用できるようにしました。

○コロナ禍での学校安全研修

  本県では、例年6月下旬に「防災教育指導者研修会」を開催していましたが、今年度からは、他の研修会との統合・改編を行い、学校安全に関する内容を一本化して「安全教育指導者研修会」として実施することとしました。
  本研修は、各学校1名参加の悉皆研修として約900人が一堂に参集する予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、急遽、実践発表を削減するなど規模を縮小した上で、動画視聴によるe-ラーニング方式で実施しました。

〔受講対象者〕
  • 国立・私立・公立学校(幼稚園・幼保連携認定こども園含む)の学校安全担当者
  • 各市町村教育委員会及び各教育事務所の学校安全担当者
〔研修内容〕
  • 行政説明「学校における安全教育・安全管理の留意点について」 保健体育課 指導主事
  • 講義1「発達段階に応じた交通安全教育の方法」 東北工業大学 教授 小川和久 氏
     第1章 安全教育の考え方と指導ポイント
     第2章 幼稚園・小学校低学年・特別支援学校編
     第3章 小学校 中・高学年編
     第4章 中学校編
     第5章 高等学校編
  • 講義2「『減災教室』を活用した防災教室」 岐阜大学 教授 髙木朗義 氏
〔研修の流れ〕
  • 研修動画をYouTubeにアップロード(限定配信)→URL、QRコードを実施要項に記載
  • 研修開催通知文に印刷用資料を添付
  • 受講者は動画を視聴し、事後アンケートに回答(理解度等を問う簡単なもの)
  • 所属教職員へ研修内容を伝達(動画URLを伝え各自視聴する方法も可)
〔その他〕
  • 事後アンケートは、「茨城県教育情報ネットワーク」のアンケート機能を活用
  • 本研修に加え、文部科学省作成の「教職員のための学校安全e-ラーニング」を実施するよう周知
  • 研修期間は令和2年7月1日から8月21日まで(アンケート回答期限は8月31日)

(茨城県教育庁学校教育部保健体育課 指導主事 平野敬靖)


「学校事故対応に関する指針」に基づく詳細調査報告書の横断整理

  文部科学省は、平成28年3月に学校事故発生の防止及び事故後の適切な対応に取り組むためのガイドライン「学校事故対応に関する指針」を策定しました。
  この度、その指針に基づき詳細調査が実施された事故について、詳細調査報告書の概要をもとに事故の要因、事故後の対応、教訓とすべき点などを整理しました。
  各事故事例を学校関係者に知っていただくことは、今後の学校安全に関する取組への気付きを与えてくれます。また、多くの教職員・学校設置者は、重大事故へ対応する経験がほとんどありません。
  そのため、本資料を通じて重大事故例の一端をあらかじめ知っていただき、万一の場合の的確な対応に役立てていただければと考えています。
  今後の学校事故防止や事故発生後の適切な対応の更なる向上につながりますよう、御活用願います。