今月のニュース

令和2年8月のニュース目次

令和2年8月号

職員だより

文部科学省 総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課

  この度の令和2年7月豪雨災害で被害に遭われた皆様に、心よりお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。

  さて、今月の「職員だより」から「チーム学校安全 リレー寄稿」をスタートいたします。今年度は、新型コロナウイルス感染症の関係で健康教育・食育・学校安全行政担当者連絡協議会が中止となり、各地域の情報交換の機会がありませんでした。このシリーズを通して、各地域での特色ある学校安全の取組を参考にしていただければと思います。
  第1回目は、この度の豪雨災害で甚大な被害に遭われました大分県教育委員会より寄稿いただきました。様々な工夫を凝らして実践的な研修会や安全教育の推進に取り組まれています。是非参考にしてください。
  また、一般社団法人日本損害保険協会主催の「第17回小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」作品募集について紹介します。今年度よりマップ作りのアプリを掲載した「タブレット」の無料貸し出しも行われています。

チーム学校安全 リレー寄稿①~大分県教育委員会における学校安全の取組~

1 沿革

  本県では平成26年度までは体育保健課(学校保健・安全班)が学校安全を担当していましたが、平成27年度、体育保健課に「学校防災・安全班」を設置し、学校安全を担当する班が独立しました。平成29年度に、組織改正により体育保健課学校防災・安全班と生徒指導推進室が統合して、学校安全・安心支援課を設置し、現在に至ります。

2 「防災教育コーディネーター」について

  第2次学校安全の推進に関する計画では、「学校安全を中核となって推進する教員」の位置づけが盛り込まれています。本県では熊本地震の教訓や、それまでの防災教育の実践研究の成果から、学校安全のうち災害安全の領域について安全教育や安全対策を中核として担う「防災教育コーディネーター」を各学校で位置づけています。
(平成30年度から県立学校と県内2市の小中学校で先行して導入し、令和元年度からは全ての公立学校に導入)

防災教育コーディネーターの役割
【防災教育コーディネーターの活動例】
<防災委員会の打合せ風景>

(大分県立杵築高等学校)

  • 教科における防災教育の授業実践(地理+数学・家庭科・保健体育)の計画
  • 生徒会に防災委員会を設置し、生徒の主体的な防災教育を推進

<オリジナルキャラクター:ザ ボウサイーズ>

(大分県立臼杵支援学校)

  • オリジナルキャラクターを活用した防災教育の実施
  • 地域住民や行政機関(警察・県土木事務所等)と連携した防災学習に取り組む

  防災教育コーディネーターの資質向上のため、防災教育の実践に関する研修会を開催しており、県立学校の防災教育コーディネーターは防災士養成研修も受講することとしています。また、県立・私立学校間の情報交換や市町村防災部局との連携を図るため「高等学校防災教育推進連絡会議」を設置しており、県内を9ブロックに分け、各地域の高校(県立・私立)・特別支援学校の防災教育コーディネーターや市町村防災担当者が参加する地域会議を開催しています。

3 危機管理マニュアル等の改善に向けた取組

  学校保健安全法に定められた危険等発生時対処要領(以下、「危機管理マニュアル」という。)の内容は多岐にわたり、作成に当たっては一定の知識が要求されます。危機管理マニュアルは学校ごとに立地条件や児童生徒の状況を勘案して作成されますが、各学校でマニュアルの記載内容を自主点検できるよう、平成29年度から点検シートを作成し、各学校に周知しています。また、今年度の「防災教育コーディネーター研修会」では、学校安全計画と危機管理マニュアルの内容点検をテーマとして講義及び演習を実施しました。

<防災教育コーディネーター研修会における演習資料(抄)>
4 実践的な防災教育の普及に向けた取組

  これまで、教職員の校内研修に防災の専門家や当課職員を派遣する「学校防災出前講座」を実施してきましたが、防災教育の実践研究で有効であった、「防災フィールドワーク」や「マイタイムライン学習」等の手法を普及するため、今年度から「学校防災出前講座」の対象を児童生徒向けの学習にも広げました。
  現在27校(小・中・高・特支)から申込があり、6月末から順次実施中です。

<学校防災出前講座 マイタイムライン学習(日田市立石井小学校で開催)>
<学校防災出前講座 基礎講座(大分県立日田三隈高校で開催)>

  防災フィールドワークやマイタイムライン学習については、学校防災出前講座で授業実践しながら、指導案や資料の作成・見直しを図っており、将来は本県教育委員会ホームページ上に指導案や資料を公開して、どの学校でも実践できるようにする予定です。また、県防災局が、児童生徒が家庭で話し合って、実際のマイタイムラインを作成するツールの開発を進めており、当課も内容の検討や学校現場での普及の面などで協力しています。

5 県立学校自転車通学生のヘルメット着用義務化に向けた取組

  本県の県立高校(特別支援学校高等部を含む)では約12,000人の生徒が自転車を利用して通学しています。自転車は安価で健康にもよい乗り物ですが、法令上は車両の一種であり、交通安全上は被害者にも加害者にもなり得るリスクがあります。自転車事故のうち頭部を損傷する事故は死亡や重傷となるリスクが大きく、警察庁の調査によると自転車死亡事故のうち約6割強が頭部損傷によるものとされています。本県でも平成30年1月に県立高校の生徒が通学中に車に追突され、一時意識不明の重体となる事故が発生しています。
  これらの状況から、自転車通学の高校生がヘルメットを着用することは交通安全上有効な取組であると思われますが、現状では、ほとんどの生徒がヘルメットを着用できていません。これは、身近にヘルメットを着用している生徒(ロールモデル)がいないことが原因であると考え、昨年度から県立高校の自転車通学生から「ヘルメット着用推進モニター」を募集し、ヘルメットの購入費を助成するとともに実際にヘルメットを着用して通学する姿を他の生徒に見せるようにしました。さらに、モニターにはアンケート調査や広報番組の制作に協力していただきました。「ヘルメット着用推進モニター」の人数は令和元年度からの2年間で約1,200人(自転車通学生の約1割)を想定していましたが、県立学校の教職員の努力や保護者の理解もあり、結果的には1,380人の応募があり、ヘルメットを着用して通学する高校生の姿を街中でも見かけるようになってきました。

<ヘルメット着用推進モニターのアンケート結果>

  併せて、今年度中に県立高校の自転車通学生のヘルメット着用義務化を教育委員会で機関決定した後に各学校の校則や自転車通学許可条件を改正することにより、令和3年4月からは一斉に自転車通学生のヘルメット着用義務化を実施する予定としています。

6 おわりに

  本県は北部と中部の一部を除き、山がちな地形であり、山地に河川が流れて形成された谷底平野(こくていへいや)や盆地に集落が数多く形成されています。そのため平成24年の九州北部豪雨以来、毎年のように水害・土砂災害の被害に見舞われており、本年7月の豪雨災害でも日田市や由布市で人的被害も含め、甚大な被害が発生しました。防災教育を進める上では、まずは学校の安全を図るとともに、児童生徒が将来社会に出た後も、地域で安全に生活できるための知識の活用や意識の醸成のための教育実践が大切であると考えています。

(大分県教育庁学校安全・安心支援課 副主幹 井上 哲一)


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