今月のニュース バックナンバー

令和2年3月号

職員だより

文部科学省 総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課

地域との連携・協働による学校安全の事例紹介

  先日開催した、令和元年度「学校安全総合支援事業」全国成果発表会では、学校安全の推進において『地域との連携』がキーワードになっているとあらためて感じたところです。今回の職員だよりでは、生活安全、交通安全、災害安全のそれぞれの分野から、地域との連携・協働に取り組んでいる事例をご紹介します。

「市民防犯」で子どもを犯罪から守る(武田信彦氏)

<講演する武田氏>

  全国成果発表会にもご登壇いただいた、「うさぎママのパトロール教室」を主宰している安全インストラクターの武田信彦さんは、一般市民ができる防犯=”市民防犯”をキーワードに活動しています。
  市民防犯とは、地域住民が警察や行政機関等と協働し、犯罪が起きにくい環境づくりや助け合いの輪を広げる取り組みを言います。また、ワークショップなど参加体験をとおして個人の「身を守る力」を引き出すプログラムも実施しています。
  武田さんは、各世代が安全をキーワードに緩やかにつながり合うような場づくりを積極的に応援しています。その中でも最近広がっているのが、「学生防犯ボランティア」だそうです。高校生や専門学校生、大学生などの学生たちが、小学生や中学生を守るために地域活動に参加する機会が増えているのです。もちろん、犯罪や非行と対峙するものではなく、あくまでも「見守り」や「助け合い」の輪を広げるための活動です。さらに、それぞれの得意技を活かし、防犯ポスターの制作、歌やダンスでの防犯啓発、お祭りやイベントでのブース運営、小学生へのネット安全教育、寸劇での振り込め詐欺防止…など多様な取り組みが広がっているそうです。
  このような学生たちの取り組みは、地域の見守りや安全教育が育んだ成果の一つだと武田さんは言います。地域の大人たちが、日々のあいさつや声かけをとおして見守ることは、次世代を育む「心への種まき」。その種たちが、全国各地で花を開き、新たな見守りの力となっているのです。そのことは、現役で活躍する防犯ボランティアのみなさんの大きな励みにもなっています。

PTAが交通安全ドリルを製作(川崎市立日吉小学校)

  神奈川県の川崎市立日吉小学校では、子どもたちに楽しく交通安全の知識を身に付けてもらうため、PTAの方々が、出版社とタッグを組んで「うんこ交通安全ドリル」を製作しました。
  同小PTA舘 勇紀会長によると、川崎市幸区PTA協議会主催で、毎年「親子自転車安全教室」を開催するなど地域一体となって交通安全への取組を推進してきましたが、交通安全の知識は自らの身を守る大切なものであるにも関わらず、子どもたちは興味を示しにくく、交通安全は最重要課題の1つであったとのことです。
   一方、教育事業に進出し『うんこ漢字ドリル』を出版した文響社は、昨年5月頃、子どもたちが巻き込まれる事故・事件が相次いだことを受けて、子どもたちの安全のために何か貢献できることはないか、保護者と一緒に何かできることはないかと考えていました。
  両者がタッグを組み、PTAの人と通学路の危険な場所や事故の多い場所を実際に見て回ったり、運送会社の協力を得てトラックの死角検証を行うなどして、気を付けるべきポイントを盛り込んだドリルを完成させました。

<うんこ交通安全ドリル 日吉小学校編の一部>

  昨年11月、お披露目を兼ねたPTA主催の「うんこ交通安全教室」では、子どもたちが元気よくクイズに答えながら交通ルールを学び、家庭でも親子で交通安全について話すきっかけになったとのことです。
  なお、文響社では、汎用版冊子の制作も検討中とのことです。
  お問合せ先:biz-unko(at)bunkyosha.com
  ※(at)は@に置き換えてください

地元の防災学習施設と学校の連携(いのちをつなぐ未来館)

<鵜住居小学校6年生による防災学習発表会の様子>

  東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県釜石市鵜住居町に、「津波による犠牲をなくし、未来の命を守る」ことを目的とした防災学習施設「いのちをつなぐ未来館」があります。この施設には、発災時の釜石市の子どもたちの避難行動や震災前から取り組んでいた防災教育等を紹介する展示室をはじめ、防災学習室、資料閲覧室があります。
  施設では、地元の小中学生が防災について学習したことを地域に発信する活動が行われています。令和2年1月31日には、地元の鵜住居小学校6年生による防災学習発表会が行われました。児童の皆さんが東日本大震災や昨年の令和元年東日本台風(台風第19号)の教訓を基に釜石市への提言をまとめ、地域の方々に発表しました。また、地元の釜石東中学校の生徒たちによる「防災学習のまとめ展」の展示発表も行われています。

  施設には、発災当時釜石東中学校の3年生で、震災を生き抜いた菊池のどかさんが職員として勤務しています。菊池さんは、施設を訪れた子どもたちに震災の教訓を語り継ぐとともに、防災学習のワークショップなども行っています。菊池さんは、今後の施設の果たす役割として、「子どもたちが地域の方々とつながるための場の提供を行い、学校と地域が連携し合う手伝いをし、みんなが生き残れるまちづくりに取り組んでいきたい」と話しています。これからも学校と地域が一体となった防災教育が推進されていくことが期待されます。