今月のニュース バックナンバー

令和5年3月号

職員だより

文部科学省 総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課

令和4年度学校安全指導者研修会レポート

 令和5年1月26日(木)に、令和4年度学校安全指導者研修会(文部科学省主催)が宮城県石巻市で開催されました。冬型の気圧配置により寒気の厳しい天候でしたが、全国から学校の先生方や教育委員会職員の方々90名が参加されました。本研修会は、令和2年度から実施していますが、本年度、初めて対面で開催することができました。また、研修会を東日本大震災の被災地で開催し、下記の内容で実施しました。

【研修の内容】
1.研修①   震災遺構「門脇小学校」での見学・語り部講話
講師   東松島市立矢本東小学校校長 相沢 進氏(当時門脇小学校教務主任)
石巻市立鹿妻小学校教頭 本田 秀一氏(当時門脇小学校学級担任)
2.研修②   震災遺構「大川小学校」での見学・語り部講話
講師   大川伝承の会 共同代表 佐藤 敏郎氏(大川小学校御遺族)
大川伝承の会 理事 永沼 悠斗氏(大川小学校OB)
3.ワークショップ
講師   東松島市立矢本第一中学校校長 平塚 真一郎氏(大川小学校御遺族)
進行   文部科学省総合教育政策局安全教育調査官 森本 晋也
門脇小学校で当時の状況を聞く様子

 研修①では、3.11メモリアルネットワークのスタッフの方々の案内で、グループごとに震災遺構の門脇小学校を見学しました。講師の相沢進先生からは、当時の学校の避難状況や地域住民の避難誘導、震災後の校長としての取組等についてお話しいただきました。また、本田秀一先生からは、被災した当時の3年2組の教室前で、避難訓練通りにできたこと、訓練通りにいかなかったこと、その後の学校再開の様子等についてお話いただきました。

大川小学校の野外ステージの壁画前での講話の様子

 研修②では、大川伝承の会の佐藤敏郎氏と永沼悠斗氏から、震災前の学校や地域の思い出、生き生きと活動していた子どもたちの様子、そして3月11日の避難の状況などについてお話しいただきました。また、子どもたちが描いた野外ステージの壁画「未来を拓く」(校歌の題)の説明とともに、ここ(大川小学校)を「未来をひらく場所」として、未来につながる場所にしてほしいという思いについてお話いただきました。

ワークショップの講話の様子

 ワークショップでは、最初に大川小学校の御遺族で、現在中学校の校長をなさっている平塚真一郎先生から、講話として「学校安全の担当者に期待すること~未来の命を守るために~」と題して、大川小学校で学校管理下で多くの犠牲がでてしまった要因や、安全の本質である「他人事」を「自分事」にするために大切なことなどこれからの学校防災の在り方についてお話いただきました。その後、本研修会で学んだことを振り返り、各地域や各学校でどんなことに取り組んでいきたいかグループで交流しました。


 参加者からは、講師の方々のお話を聞いて訓練の大切さや防災教育の必要性を強く感じたとの感想が寄せられました。
 震災から12年が経過しました。震災の教訓を風化させることなく、本研修会で学んだことをぜひ各地域や各学校での取組に生かしてほしいと思います。

【参加者の感想】
多くの先生方が、今回のように現地を訪れ研修していただけるとよいかと強く感じました。講師の皆様からのお話で強く感じたことは、訓練の大切さです。普段できていないことは、誤った判断につながりかねないことや協力体制にも影響することなどが考えられます。今後、学校の訓練等に携わる上で、教訓にしていきたいと思いました。
今回の研修のように「当事者」である方々のお話を聞くことで、私の心は大きく動かされました。そして、この自分に起こった変化を少しでも多くの方々に伝えていくことが「語り継ぐ」ということではないかと思います。宮城県から遠く離れた土地に住んでいるからこそ、このような機会で得た学びを多くの先生方にもお伝えしたいと考えています。
平時の準備、自分ごととしての理解をはじめ、多くのことを学び、「防災教育は未来を拓く教育」と感じた。全ての子どもたちやその家族の未来のために、命を守る教育である。災害の恐怖や悲惨さを教えるのではなく、自分と周りの人たちの幸せを守るために、今自分ができることを考え続けるような職員と子どもを育てていきたい。

令和4年度学校安全総合支援事業全国成果発表会レポート

 令和5年2月9日(木)に、令和4年度学校安全総合支援事業全国成果発表会がオンラインで開催されました。発表会の内容は、下記の通りです。

【次第】
開会行事
基調講演
 「児童・生徒のケガを減らす―変えられるものを見つけ、変えられるものを変える―」
緑園こどもクリニック院長 日本学術会議特任連携会員 山中 龍宏 氏
実践発表Ⅰ【高知県】
 「自ら学ぶ力を身に付け,生き抜く力を育む~「気づき・感じ・伝え合う」ことを大切にした安全教育の日常化~
土佐市立蓮池小学校 校長 𠮷門 直子 氏
教諭 北岡ちまり 氏
実践発表Ⅱ【千葉県】
 「子どもたちの命を守る学校安全推進体制の構築に向けて」
八街市教育委員会事務局学校教育課 課長 本間 照美 氏
指導主事 石綿 賢 氏
実践発表Ⅲ【山口県】
 「デバイスと地域力を活用した通学路の安全確保」
光市立光井小学校 教諭 髙森 琳稔 氏
光市立光井中学校 教諭 伊藤 洋志 氏
情報交換
閉会行事

 基調講演では、山中龍宏氏から、子供たちのケガをデータに基づき、どのように予防していけばよいか、多くの具体的な事例をあげながらご紹介いただきました。また、日本と欧米の安全の考え方の違いや傷害予防のための理論(①変えたいもの ②変えられるもの ③変えられないもの)等についての説明もありました。
 実践発表では、3つの委託先から具体的な取組内容の紹介がありました。高知県のモデル地域の拠点校である土佐市立蓮池小学校からは、安全教育の日常化を目指し、教科等横断的な視点からの学校安全計画の見直しや、子供たちが安全を自分事として捉え行動できるようになるための指導法の工夫、安全の指導事項整理票の作成などの取組が紹介されました。
 千葉県のモデル地域である八街市教育委員会からは、令和3年6月の児童の列にトラックが突っ込み5人の児童が死傷する痛ましい事故のその後の対応や、通学路の対策、モデル校での「聞き書きマップ」を活用した取組、デジタル技術を活用した安全教育、地域の多様な主体と密接に連携・協働して子供たちが地域をより魅力ある街づくりに取り組んだ学習活動等が紹介されました。
 山口県のモデル地域である光市立光井小学校と光井中学校からは、コミュニティ・スクールやデバイスを活用した通学路の安全確保についての紹介がありました。具体的には、光市では子供たちの熟議への参加を積極的に推進しており、その中で「通学路の安全」をテーマにした取組や、デバイスの学校・家庭・地域の協働学習機能を活用した安全マップ作りなどが紹介されました。
 情報交換では、ブレイクアウトルームごとに、基調講演や実践発表を踏まえ、各地域や各学校での学校安全の実効性を高めていくためにどのように取組を進めていけばよいか協議が行われました。
 本成果発表会を参考にしながら、各地域や各学校での学校安全の質の向上を目指して取り組んでほしいと思います。